ある日、ビルの中、王子様に囚われました。

黒岩さんがくるりとパソコンを此方に向ける。
すると、新澤さんが監視カメラに向かって陽気に手を振っていてくれた。
が、その肩には誰かを支えているだろう手。

「どうされたんですか? 会議は?」

『いやあ、明良の両親が下のフロアに襲撃してきてさ、見てよ、名誉の傷だよー』
新澤さんが横にずれると、肩に支えられている人が映った。

「お兄ちゃんっ」

『そ。だから早く開けて。こいつ重いから社員カード出せなくて』
「……はい」

天宮さんの言葉が一瞬過ったけれど、緊急事態なのですぐに応じた。

黒岩さんが新澤さんの手伝いに向かったので私も後に続く。

「ってぇ。無茶しやがる」
「お兄ちゃん」

頭を押さえて苛々を隠せていない様子の兄の元へ駆け寄る。
すると兄のスーツがよれよれに乱れて、一人で歩けない様子だった。

「どうしたの? 怪我したの?」

「一階に親父たちがいた。俺を見つけて慌てて追いかけて来たからエレベーターに乗り込もうとして開く前に突撃して頭を打った」

「……そう」

頭を押さえていたから、両親に何かされたのか冷や冷やしちゃったのに心配した気持ちを返して欲しい。

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