ある日、ビルの中、王子様に囚われました。

「でも病院に居なくて良いってことは、体調が良くなってるってことですよね。良かったですね」

これで少しは天宮さんの激務が緩和されるのかなと思ったら、嬉しくなった。

「……本当、一人にしとくのが心配なほどお人好しですね」

その言葉には、ちょっとだけ棘が感じられた。棘、いや、呆れてる?
でも何が悪いのか分からず首を傾げたら彼も珈琲を置く。

「まあ良いです。汚い部分を見せなければ、知らなくて良いってことですので」

「それって一体……」

どういう意味ですか、と言おうとしてインターフォンに遮られた。
天宮さんがドアを開けると、ほんのさっきまで一緒だったように感じられる兄が立っていた。

「うわ。朝からよくそんなに食べられるな」

トマトジュース一本を持って、私たちの朝食を見て驚いている。
「お前に栄養ドリンク買ってきたのに、要らなさそうだな」

「ええ。俺は咲良さんの隣にいられたらそんなもの必要ありません」

にっこり笑う天宮さんに、お兄ちゃんが吐きそうな顔をする。

「お前、こいつ絶対悪い男だ。止めとけよ」
「……お兄ちゃんが信用できるって言ったくせに」
「信用できる悪い男もいるんだと今、気付いた」

宇宙人をみるかのように天宮さんを見ながら私の隣に座った。
確かに、天宮さんは不思議が多いけど、悪い人ではないと思いたい。

というか、そうしか思えなかった。


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