ある日、ビルの中、王子様に囚われました。

でもすることもないし、一番私が忙しくないのだから当然だと、淹れて持って行った。

「ありがとう。うわー殺される」
「仕事ですってば」

「でもあいつは公私半分ずつって感じだし」
「天宮さんはそんなことしませんよ」
断言できる、と私が胸を叩くと、黒岩さんが小さく吹きだした。

「では、先に向かわせて頂きます」

黒岩さんは新澤さんの様子を確認してから社長室を出て行く。
もしや、会議に参加?

「あー俺もしばらくしたら行くね」
「ま、待って下さい!」

ぐえ、と蛙が潰れたような声を出されて怯んでしまった。
が、新澤さんのネクタイを咄嗟に引っ張ってしまい、後には引けなかった。

「一杯の珈琲の報酬に、私を会議に参加させてくれませんか!」
「君を会議に? 無理だよ。そんなの俺が明日、東京湾に浮かんでるかもしれない」

「お願いします! ほら、変装もします!」

ディスクに置かれていた作業用のブルーライトカット眼鏡をかけてまたネクタイを掴んだ。

「今日はこの会社の制服を着てるし、お茶を運ぶふりをして会議の様子を知りたいです!」

「あーっと、変装しなくても誰も君の顔を知らないだろうけど、俺明日から無職確実だし」

「そんなの絶対阻止します。私に脅されたって言って下さい」


< 61 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop