ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
でもすることもないし、一番私が忙しくないのだから当然だと、淹れて持って行った。
「ありがとう。うわー殺される」
「仕事ですってば」
「でもあいつは公私半分ずつって感じだし」
「天宮さんはそんなことしませんよ」
断言できる、と私が胸を叩くと、黒岩さんが小さく吹きだした。
「では、先に向かわせて頂きます」
黒岩さんは新澤さんの様子を確認してから社長室を出て行く。
もしや、会議に参加?
「あー俺もしばらくしたら行くね」
「ま、待って下さい!」
ぐえ、と蛙が潰れたような声を出されて怯んでしまった。
が、新澤さんのネクタイを咄嗟に引っ張ってしまい、後には引けなかった。
「一杯の珈琲の報酬に、私を会議に参加させてくれませんか!」
「君を会議に? 無理だよ。そんなの俺が明日、東京湾に浮かんでるかもしれない」
「お願いします! ほら、変装もします!」
ディスクに置かれていた作業用のブルーライトカット眼鏡をかけてまたネクタイを掴んだ。
「今日はこの会社の制服を着てるし、お茶を運ぶふりをして会議の様子を知りたいです!」
「あーっと、変装しなくても誰も君の顔を知らないだろうけど、俺明日から無職確実だし」
「そんなの絶対阻止します。私に脅されたって言って下さい」