ある日、ビルの中、王子様に囚われました。




下のフロアに降り、受付で新澤さんが社員証を見せてから中へ入る。
廊下を歩きながら、何部屋も区切られた部屋の向こうは足元の擦り硝子ごしに人がいるのが見えた。

「担当の社員と、うちに相談に来てる顧客。何を話してるかは他の人に聞こえないように全室防音だし、擦り硝子で誰か入ってるか分かるようにしてる。鉢合わせも嫌だし。あと、ライバル会社とか仲が悪い会社は日にちや時間を絶対にずらしてる」

「凄い……」

「で、ここから先は社員証を認証させて入ると会議室。特別に社長の身内の方々も連日訪れてるけどね」

機械に社員証を照らして、自動ドアが開く。

すると奥に扉が見える。

「飲み終わったカップを下げ終わったらさっさと退散するんだよ」

「は、はい」

新澤さんは、深く息を吸い込む両頬を思いっきり叩いてから、重々しく扉を開けた。


< 63 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop