ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「失礼します」
部屋に入ると、テーブルに書類が沢山積まれていて、一人用のソファが四つ。
枕元の机にはパソコンな二台も置かれている。
お祖父さんの看病をしつつ仕事をしていたのかな。
そう思うぐらい、安静にしていなきゃいけない病人の部屋には見えなかった。
置いてあるベッドやソファ、絨毯、飾られた絵画や生けてある花などを見ても、私が泊まっている部屋とは比べ物にならない。
ゴシック調の雰囲気の中、青白い顔で眠っているご老人の顔を見て泣きだしそうになった。
お祖父さん、と呼ぶには若々しい。意志の強そうな眉に、閉ざされた目。きつく結んだ唇。
顔色は悪いけれど、目を開けたらきっと威厳のある上品なご老人なんだろうなって思う。
こんなホテルのスイートルームにいても雰囲気に負けていない感じだった。
そんな何もかも一流そうなお爺さんが私の祖父だとどうしてもピンとこなかったけれど、でもこれから交流できたら嬉しい。
「……小さい時、自分にお爺ちゃんがいなくて周りが羨ましかったことがあったの。でも今はもう、お祖父さんが健康で長生きしているだけで嬉しい、と思います」
眠っているお祖父さんにそれだけ言うと、ソファを一つずるずると引きずってベッドの傍に置いた。