ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

奈央ちゃんとか……呼ぶなっ!

オレは無言で近づくと、細い腕をぐいっとつかんだ。
「ちょ……拓巳!? 何するのっ!」

唖然とする男の目の前で、
奈央さんのコートとかばんを奪うように椅子から取り上げ。
そのまま勢いに任せて、彼女を連れて店を飛び出した。
男の視界から、早くこの人を隠してしまいたくて。

「ちょ……放してよ! 拓巳っ!!」

人の群れを蹴散らすように、オレは足早に歩き続けた。



◇◇◇◇
半日前にスーツケースを運び込んだばかりのホテルの部屋に連れ込んで。
オレはようやく彼女を解放した。

一緒に過ごすために予約した、エグゼクティブフロアのスイートルーム。
でも今は。
雑誌で見開き特集される夜景も、ラグジュアリーなインテリアも、
目に入らなかった。

「何考えてるの!? いきなりこんな強引なことっ」
ギュッときつい目がオレを見据える。

「あいつ、誰?」
低い声で、問いかけた。
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