なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。

––––––バキッ!!


骨と骨がぶつかり合うような音と共に、野次馬のきゃあ!という叫び声。


さらに……


「は、花枝先輩!!こっち…!こっち来ますよ!!」


バシバシと私の肩を叩く山下さんの向こうからやってくるのは、地面に尻餅をついてジリジリと後ずさりするチャラチャラした装いの男と、その男を追い込む男……。


「あれ!長瀬 渉【ナガセ ワタル】じゃないですか!!」


「長瀬…渉?」


「2年生の、学校いちヤバイ人ですよっ!!」


学校いちヤバイ?


なんとも抽象的な表現だな。


山下さんらしいけど…。


つまり、ヤンキーって事?



その男と目が合い、一瞬心臓がドクンと脈を打った。


不覚にも目が釘付けになってしまう。



長瀬 渉という男は、私が想像しているヤンキーなんかとはかけ離れていた。


ほら、ヤンキーって言ったらさ?


髪型角刈りで剃りこみ入れてて、だっぼだぼの制服のズボンに手を突っ込んで、なぜか中腰でニワトリみたいに首を動かしながら歩く……て、伝わるかなこのイメージ。


だけど目の前のこの男は違う。


まるでモデルのように整ったルックス、高身長、目鼻立ちクッキリとした中性的な顔立ち。


長い睫毛に色素の薄い茶色の目が、鋭い眼光を放っている。


髪の毛はちょっと長めの柔らかそうな金髪。


その髪が風になびいてキラキラと光を反射していて……。
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