下手くそな恋を泣きながら


「それなら、ちゃんと見せてやる」


そう言って

何を見せてくれるのか分からないまま

私が夏休み中の土曜日

部長と一緒に、あの日、初めてプライベートで出会ったあの街へと向かった。


あの街には春坂先生もいる。

そわそわするけれど、あの生徒のために先生も今はそれどころじゃないはず。

「あの街に一体、何があるんですか?」

「着いてからのお楽しみ。」


何度聞いてもそればかり。

「今日、一泊するんですよね?どこのホテルですか?」

「それも着いてからのお楽しみ」


何が待ち受けてるのかも分からないまま

段々、見覚えのある風景が見えてくる。

そう

この街で私は

優しい部長の性格を知った。


前回とは違い

春坂先生の務める学校を挟んで駅とは反対側の住宅地を車で走る。

規模が大めの畑付きの一軒家が並ぶ中で

門構えも立派なお屋敷に着いた。


門をくぐると庭師が綺麗に施した池のある庭。

「知り合いのお宅ですか?なんか・・・私には敷居が高そうで・・・」

見るからに金持ちであろうお宅だ。


黙って部長の後ろをついていく。

すると、大きな開き戸を遠慮なく開け放つと「今、帰ったー!」と声を張り上げる部長。

思わず目を丸くした私をみてくすくす笑う。

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