下手くそな恋を泣きながら

ぎゃあぎゃあ騒ぐ母親を部長が宥めていると、ほんわりとした雰囲気のおじいちゃんが呆れた顔をしながら姿を見せた。

と、いうことは・・・この方が部長のお父さん?

「せっかく透が帰って来たんだから、やめなさい。」

その声にハッとした表情になった部長のお母さんは、途端に騒ぐのを止めて口を閉じた。


「父さん久しぶり」

母親への態度とはうって変わり、部長が人懐こい笑顔を見せると、部長のお父さんはすかさず私を見た。

「透、こちらのお嬢さんは?」

「ああ。こちらは森山彩葉さん。俺の恋人」

恋人⁉

まだ付き合う話にもなってないのに⁉


まさかの紹介に顔が熱くなる。


「も、森山彩葉です。よろしく・・・お願いします」

慌てて頭を下げると「これは失礼しました。透の父親です。こっちが家内の美冬です。」

丁寧な自己紹介を頂き、中へと通される。

だだっ広い平屋。何個お部屋があるのかしらと、そわそわ落ち着かない私を部長が実家住まいだった頃に自分の部屋として使っていた部屋に私を連れてきた。


たぶん部長が使ってた頃のままだろう。

学習机に、辞書と古い漫画が並んだ本棚。

オーディオコンポ

それとベッド脇に小さなプラネタリウムの機械が置かれている。

< 142 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop