下手くそな恋を泣きながら


「そう。情けないけど子供にベッタリで、離れることのできない人だったんだ。

今もそうだけどね。

母親のことでは本当に嫌な思いをしてきたよ・・・

だから高校は単身赴任してた父親の住んでた土地で受験したんだ。

母さんと離れたくてね。

今もトラウマでこっちに帰ってきても、ここには泊まらないでビジネスホテルに泊まってる。」


「そう・・・だったんですね」

子供に執着するしかなかった部長のお母さんの孤独は

きっと、私には計れないであろうと話を聞きながら感じた。

家のために好きな人についていけない。

この広い家で子供と二人きり。

心の隙間を埋めたくても埋めようがなかったのかもしれないと思うと・・・

胸がきゅっと締め付けられるようだった。


もしも部長が、どこか遠くに行ってしまったなら・・・

私はそれに堪える事ができるだろうか・・・

改めてそんなことをぼんやり考えると

やっぱり心の中にしっかり部長が存在してることを思い知らされる。


「だから

・・・きっと森山が勘違いしてた恋人は

うちの母さんだね」

「えっ?」

「春坂の言葉で勘違いしてたならそれしかない。

あの親だからね。それがネックで恋人を作る気にさえなれないよ。」


「それ・・・信じていいんですか?」

「信じる信じないは森山次第だけどね。」


肩をすくませ、くすくす笑う部長を見ていると


真剣に悩んでた自分がアホらしく思える。



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