下手くそな恋を泣きながら
学校の外を一歩出た先生は
私の知ってる先生とは少し違って見えた。
そう、私は学校で100%教師の顔をした先生しか知らなかった。
それが先生の全てであるかのように受け止めて
その世界の先生のことだけ知って浮かれていただけだったのかもしれない。
今目の前のその背中は
教師と一人の人間の間を揺れている不確かな存在のように見えた。
その背中を追いかけながら
本当は先生の何一つ知らなかったのかもしれないと
淋しい気持ちが小さな波のように心を締め付ける。
「どこに行くんですか?」
淋しさからか、少し不安になり問いかけた。
「着いてからのお楽しみ」
「遠いですか?」
「そんなに遠くないよ。」
「そこに、何があるんですか?」
言葉が途切れるのが恐くて、質問を続けると、振り返りくすくす笑う先生が「修学旅行の時も、そんな感じだったね。
そんなに不安がらなくても大丈夫」そう言って穏やかに笑った。
私と一緒に行った修学旅行なんて、もう遠い昔のことなのに、そんな事を覚えているのかと驚いた。
あの頃の私は家族と離れてどこかに泊まりにいく。なんて経験が殆どなくて、友達と一緒の旅行。
学校の修学旅行のわくわくした気持ちと同じだけの不安を抱えて、先生の側からあまり離れることができなかった。