下手くそな恋を泣きながら
「そんな些細なこと、覚えてくれてたんですね?」
「・・・彩葉にとっては些細なことじゃなかっただろ?」
その言葉にドキドキしてしまう。
そういう優しさが
悲しい勘違いをさせてくれるから。
駅から人気のない道を暫く歩くと、街灯だけちらほら暗闇を照らす道の先に、数件の建物が並んでいる。
「あそこだよ。」
「あそこって・・・一軒家のように見えるあの建物ですか?」
「うん。コテージなんだ。すぐ近くにサッカーのコートがあってね。何度か来たことがあるんだ。」
「そうだったんですね・・・」
「近くに商店がある。俺が買い出しに行ってくるから彩葉はコテージで待ってて」
ある意味知ってる場所だから一緒に行動できないことを悟った。
私は言われるままコテージの前で待っていると、管理室から鍵を借りてきた先生は慣れた様子で部屋の鍵を開け、電気を点ける。
靴を脱いで部屋に一歩、足を踏み入れた時
先生が私の名前を真剣な表情で呼び止めた。
あまりにも
真っ直ぐに私の瞳を捕らえるから
息をするのを忘れてしまいそうになった。
「・・・先生?」
「今日はね、他のコテージに宿泊してるお客さんはいないんだって。
管理人さんは朝まで戻らない。
ま、自宅が近いから呼べばくるけどね。
それでも
周りに誰もいないこの場所で
俺と二人きりになるのが恐かったらまだ終電に間に合うから、俺が買い物に行ってる間に帰って。
もし
帰らなかったら・・・」
そのまま口を閉じて
私の様子を伺ってるようだった。