副社長と愛され同居はじめます
「もうやだ離れて!」
腕の中でもがいたが、彼は少しも離してくれる気配はなくて寧ろ強く抱きしめてくる。
その温もりで、泣きたくなった。
悔しいしムカつくのに、抱きしめられることが嬉しい。
「小春が心配することは何もない」
「さっきも聞いた!」
「泣かせるような、後ろめたいことはしてない。嘘はつかないよ」
香水の匂いをさせて、何を言う。
そう思うのに、きっぱりと躊躇いなく断言する彼に何も言えなくなる。
これが演技なら、彼は大した役者だと思う。
涙の気配を逃がそうと、彼のスーツに顔を埋める。
するとやっぱり、香水の匂いが癪に障る。
「小春?」
抱きかかえたまま、私の髪を撫で梳きながら彼が私の表情を窺った。
下から睨む私に、彼が苦笑いをして唇を寄せようとする。
それを、掌を当てて制した。
「お風呂入って匂い落としてきて。でないとキスなんかしないから!」