副社長と愛され同居はじめます
伊月梨沙、という女性が結局なんだったのか、成瀬さんからは何も聞けなかったのだけど。


ほんの数日ほど経ってから、彼女の方から私にコンタクトがあった。


今度は、成瀬さんではなく私に会いたいという。
しかも、彼には気づかれずに、という注釈付きで。


殆ど四六時中一緒なのになかなか難しい条件だなと思ったけれど、ちょうどいい具合に役員会議の予定があった。
会社を抜け出すわけにはいかなかったから、その時間を狙って会社を訪ねてもらう。



「はじめまして。伊月梨沙と申します」


応接室で対峙した彼女は、背が高くスレンダーで、長い黒髪が印象的なとても綺麗な人だった。
ふわりと薫ってきた香水には、やはり覚えがあった。



「はじめまして。荒川小春と申します。申し訳ありません、ご足労いただいて」

「いいえ、無理を言ったのはこちらですもの」



ふふ、と美麗に笑う。


彼女は一体、成瀬さんの何なのだろう。
そして何のために私に会いに来たのだろう。


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