副社長と愛され同居はじめます
「私は、彼の元婚約者よ」
彼女からの返答は、全く意外なものではなく、寧ろやっぱりなと予測のついていたものだったが、それでも衝撃は大きかった。
何より、それならそれでどうして説明してくれなかったのだろう。
本当に『元』であるなら、隠すことなどなかったのじゃないか。
その答えも、彼女の口からあっさりと暴かれる。
「私は彼の家族に婚約者として認められていたもの、特にご両親とは仲良くさせていただいてたの。やっぱり貴女には言いづらいわよね」
そうなんですか。
と、相槌を打つので精一杯だった。
ならばなぜ、そんな風に認められた婚約者が居たのにそれを解消したのか。
「それがね、去年、急にあの人が解消して欲しいというものだから……所詮親同士が言い出したことだったし、それでもいいと思ったから私はそれで承諾したのだけど。彼以上の人なんてやっぱり、早々いないのよね」
困ったわ、と彼女は溜息を吐く。