副社長と愛され同居はじめます
「あの、なぜ突然解消に?」

「惚けないでいいわよ。貴女が現れたからでしょう?」

「いえ、でも……」



私と彼が出会ったのは、ついこの間のことで。
そう言いかけて、飲み込んだ。


だって私は知らなくても、彼の方は私を知っていたのだから。


どく、どくと嫌な鼓動を聞きながら、私はなるべく迂闊なことは話さないようにして、出来るだけ彼女に話してもらうように意識した。


成瀬さんが話さないことを、彼女が知っていると思ったからだ。



「調べて驚いたわ。貴女、荒川家の人なんですってね。彼、荒川のおじい様にはお世話になってるから……放っておけなかったのね」


やっぱり。
大本にあるのは、『荒川家』なのか。


彼と知り合って、特に一緒に暮らすようになってから、忙しくて調べることも出来ていなかったけれど。
荒川と成瀬さんに、やはり昔、何かあったのだ。


お金に困った私達を、保護しようと思うほどの何かが。


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