副社長と愛され同居はじめます
「……成瀬さんには、お世話になりっぱなしで」
当たり障りのない言葉で様子を見ながら、少し手が震えた。
どんなふうに祖父にお世話になったのか知らないけれど、いくらなんでもただ保護するだけでなく結婚までしようなんて言わないよ。
だから大丈夫。
……そんな風に祈ってしまう、自分の感情の変化に、気付いていた。
だけど、そんな気持ちに浸っている場合でもなかった。
「お世話どころか。貴女、これから迷惑しかかけないかもしれないわよ」
突然、彼女の声が厳しいものに変わったのだ。
「どういう意味ですか」
眉を寄せる。
急に鋭くなったその目が、とてもただの脅しやはったりだとも思えなかった。
「荒川俊次、知ってるでしょう」
この世で一番嫌いな人間の名前が、彼女の口から飛び出した。
「彼、事業に失敗して受継いだ財産を全部食いつぶしたのよ」