副社長と愛され同居はじめます
「おい。小春に何を言った?」
「女同士の話よ、柊さんには関係ないから」
「関係ないわけないだろ!」
怒れる成瀬さんをあしらい、彼女はさっさと応接室を出て行った。
じゃあね、とやっぱり可愛らしく手を振って。
当然、後に残された私に、成瀬さんの視線は集中する。
「小春。何を言われた」
「えーっと……彼女が言ったままのこと。貴方とやっぱり結婚したいから私に別れてくれって」
「それだけ? そんなわけないだろ、あいつそんな生ぬるい性格してないぞ」
「そ、そうなの? それは知らないけど」
本当は、しっかりがっつり、脅された。
私が成瀬さんの婚約者に収まったことを荒川俊次が知ったら、間違いなく金の無心に現れる、と。
「って、実はもう、漏らしちゃったのよね、そういう情報」
「なっ……」
「でもさ、それがガセだったってわかったら、諦めるだろうと思うの。柊さんがお金を工面することにもならないし、貴女の前に荒川俊次が現れることもない。ね、万事オッケーじゃない?」
私って頭良い!
と、彼女は無邪気なフリして見事に私を黙らせた。