副社長と愛され同居はじめます
え、嘘。
ほん、とに?


瞳に自分が映るのが見えるくらいに、近い距離。
吐息が触れあい、息遣いまで聞こえる中。


見つめ合ったまま、ゆっくりと唇が重なる。


しっとりと、薄い肌が濡れるまで何度も何度も啄んで、その間中ずっと目を閉じることは出来ず。
だけど、彼が角度を変えて深く合わせた途端、私は耐えきれずに目を閉じた。


「んっ……」


強くはないけれど、有無を言わせないキス。
主導権は全部向こうで、私はまるで口の中を愛撫するような優しく濃厚なキスに翻弄される。


息苦しさに、とん、と胸を叩いた。
少しだけ解放された隙に、はあっと深く息を吸い込む。



「ま、待って、う、運転手さんが見て……」

「芹沢は運転中だ。見てるわけないだろ」



そ、それはそうかもしれないですが!
そういう意味じゃなくて、人が居るのにこんな濃厚なキスいつまでやらかすんですか!


という、私の叫びは敢え無く彼の口の中に消えた。



「今日から、この唇は俺の」



身体の力は抜け足腰がすっかり立たなくなり、視界も意識もとろとろに融かされた頃。


最後に軽く啄んで、漸く唇を解放してくれた彼。
私の濡れた口元を、親指で拭いながら、満足げに言った。



「小春の全部を貰うまで、さてどれだけかかるかな」

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