副社長と愛され同居はじめます
だったら、私はどうすればいい?


お金持ちの男の人を捕まえて、結婚するんだと心に決めて社会人になった。
未来に約束も何もない、愛人なんて絶対嫌だ。


箪笥に使っているプラスチックの衣装ケースの上、両親の写真と位牌、それと花が飾ってある。


呑気で仲の良い二人だった。
愛情に溢れた家庭で育って、幸せだった。


二人揃って事故で呆気なく逝ってしまうあの夜までは。


僅かな保険金は、私を私立の高校に通わせた時に作ったのだろう借金の返済と、弟の高校の学費に消えた。


なんてこった、借金しなければ行けないくらいなら、私は別に公立の高校でも良かったのに。


行きたい高校に通わせてやりたいという親心だったのだろうけれど、相談くらいして欲しかった。


結局私達には愛情と思い出以外何も残らず、生活するのに必死だった。
それでもなんとか、弟を大学に入学させるところまでようやくこぎ着けたのだ。


そんな頼りない両親だが、幸せそうに笑う写真を見ていると恨む気にはなれない。
じっとこちらを見て心配されているような気になって、苦笑いで写真の正面に正座した。



「大丈夫。愛人になんかならないよ。ちゃんといい人探すから」



男の基準が、顔<性格<金、になってしまったことだけは、許していただきたいところだけど。



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