縁に連るれば
帰る所がないと言っても、誰か頼る人が実はいるんじゃないか、とか、友人の一人や二人に助けを求めたんじゃないか、とか、妙なことばかり考えてしまう。


そんなことができないから、ここで寝起きしているというのは、疾っくに知っているはずなのに。

こんなに疑り深くなる自分は、初めてだ。

落ち着かない。



「いや、ほら……女の子なんだから野宿してたらなーとか、ね?そういうことだよ?――まあ、無事でよかったよ」



取り繕っておかないと、自分が許せなくなりそうだ。

妃依ちゃんも、さすがに困っているようだった。


でもここまできてしまったら、たとえそうでも、言うことを効かなくなっていた。



「ねえ、前から思ってるんだけどさ……」



でも、これくらいは言っていいだろう?

誰だってそう思うだろう?




「妃依ちゃんの声、聞いてみたいなあ……なんて」



妃依ちゃんの目が見開かれている。

自分で言っておきながら、それに俺も思わず面を食らった。


思ったことはただ一つだ。


まずいことをした――!



「あっ、ごめん!気にしないで!」



まずい、まずいぞ――


あまりにも焦りすぎて、周りが見えなくなるほどに。

もうこれは逃げるしかない。

都合悪くなると逃げる、俺はそんな男だったのかと少し残念に思いながら。



「じゃあ気をつけて行ってきてね。また後で!」



急いで部屋を出る。


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