縁に連るれば
「……何とか、ねえ。我々は、これからは特に慎重に活動していく身だ。呉々も行動には気を付けたまえ」


「はっ」



「じゃあ私は先に戻るよ」とそれだけ言って、伊東先生は屯所に向かって去って行った。

相変わらず表情は変わらなかったが、心中では明らかに何か思っているはずだ、と息を呑む。

何を考えているのか分からないのが、また怖い。


んーと伸びをする。

はて、俺はどこへ行こう……


生憎、今日は非番だ。

京は広しと言えど、それほどふらりとする気にはなれなかった。

少し考える時間が欲しいかもしれないな、とふと思い、突き当たりの東本願寺の周囲を歩いてから戻ることにした。




新選組を離れ、彼らとは別に生きていく。


それはもうすでに隊の幹部には知れ渡っていることだ。

でもそれを、出会ったばかりの妃依ちゃんはまだ知らない。


知らないままでいるのが幸なのかどうかは、彼女が新選組を、俺をどう思っているのか分からないから、計りかねる。

……って、ここまで俺が気にする必要もないのか。


そうだった。

助けてはあげたが、何の関係もない、縁もゆかりもない娘じゃないか。

そう線引きしてしまえばいいのに、ここまで惑わされている自分がちょっと馬鹿らしくて、呆れる。



颯爽と、しかし内心ではとぼとぼと、東本願寺の外周を歩き、あっという間に西本願寺の屯所に戻ってきてしまった。


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