【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



「だから俺は最後まで反対してただろ」



「はいはい、そうだね。

……ひのちゃん、大丈夫?では、ないか」



大丈夫じゃないです……!

いまも頭の中が真っ白で言葉が出てこないし、何なら痕を残されてうれしいとか一瞬でも思った自分に後悔してる最中です……!



「別にこんなの今更だろ」



「お前たまにネジぶっ飛んでるよな」



わたしの目線に合わせるように、彼がしゃがみ込む。

そのまま「ひの」と名前を呼ばれただけで、もう。痛いぐらいに、しあわせだって思った。しあわせで、でも思ったことがどれも口にできなくて。



そのもどかしさにじわりと涙が浮かぶ。

──なによりも脆いのは、わたしの心の方だった。




「っ、ばか……、もう、」



我慢しようって……思ってたのに。

ちゃんと解決してからって思ってたのに、もうむりだ。



腕を伸ばしてぎゅうっと抱きつけば、彼が一瞬おどろいたのはわかったけれどそれを気にする余裕もない。

ぽろぽろと涙がこぼれて、浴衣姿で泣いてるわたしってきっと滑稽だろうなとかも思うのに。



「ふ、っ……好き、っ、」



──思いがあふれてしまう方が、早かった。

男の子は好きになった女の子への理性を保つのがむずかしいって何かの少女漫画で読んだけど、好きな人に対する女の子の気持ちも理性じゃ止められない。



名前を呼びたいのに呼べなくて、その代わりに抱きつく腕の力を強めたら、綺世がぎゅっと抱きしめ返してくれた。

ぽんぽんと頭を撫でられて、涙が余計にとまらない。



しばらくその腕の中で泣きじゃくって、漏れそうになる嗚咽を堪えてどれだけ経ったのか。

ようやく泣き止んだわたしの頬に残る涙のあとを、綺世が優しく拭ってくれた。



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