【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「……みやから聞いた。
お前に、どこまで何を話したか。俺に付き纏ってた元カノの発言でお前の気をひくために、俺が彼女をつくったって話は聞いたんだな?」
「……うん。でも実在しないって」
「そのままだ。
……作ったわけじゃなく、あくまで"作ったように"振舞ってた」
実在しない、架空の彼女。
だけどそれがまるで本当にいるように話していたのだと、綺世が教えてくれる。……ということは、つまり。
わたしが告白できなくなってしまった原因の"彼女"というものは、端から存在なんてしていなかったのだ。
ただ綺世が、わたしを焦らせるために。彼のまわりの人間が、わたしの反応を伺うために行っていただけのこと。──でも、それならひとつだけ噛み合わないの。
「じゃあ、音ちゃんは一体どういう存在なの」
万理とそなたの間で、微笑を浮かべている彼女。
何かしらに関係しているのは目に見えている彼女のことを聞き出そうとしたら、黙っていた万理が「その前に」と割って入った。
「わかりやすいように、時系列順で話そうか。
……まず、いま解決した架空の彼女の話のあとから」
お互いの行動をひとつずつ追っていこうと言われて、どこか納得できないまま会話に記憶を馳せる。
──あの頃綺世に彼女がいることを知った、わたしは。
「そのときまだわたしは綺世のことが好きで……
彼女がいることを知ってショックだった。だから地元で、話を聞いてくれてた人と付き合った、の」
そばにいてくれる人を、見つけたから。
最初から最後まで利用するだけの形になってしまったけれど、間違いなくわたしに優しい愛情を注いでくれていた人。
「うん、でも俺らはひのちゃんの気持ちも、ひのちゃんに彼氏がいたことも知らなかったんだよ。
そのまま、架空の彼女の話を続けて、夏に差し掛かった時、」
「俺とそなたと話してて、
ひのが「彼氏いる」って言ったんだよねえ」
そうだ。
自転車の後ろに乗せてもらって登校したという話の最中、彼氏がいるとわたしは口にした。隠していたわけではないけれど、数ヶ月経って綺世を引きずっていることを知られないように彼の気持ちを探ろうとしたの。