【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
つまり彼らがやっていたことと、わたしがしれっとやったことは同じことなのだ。
お互いが本心を互いに隠し合ったまま、お互いの本心を聞き出そうとしていた。
「そこで、綺世は焦るよね?
自分の彼女がいるって話は嘘だけど、ひのちゃんに彼氏がいるっていうのは本当なんだから」
「……、そうね」
「だから、どうにかして綺世の元にひのちゃんをもどす作戦を立てなきゃいけなかった。
……考えた結果が、"今の姫が裏切り者"っていう嘘」
疑っていたわけじゃ、ないんだけど。
嘘と言われて特におどろかないのは、彼女が裏切り者ではない気がしていたからなのかもしれない。
「架空の姫を。
はじめから、本当に存在していたみたいに演じることにしたんだよ」
──だから、音に手を貸してもらった。
そう告げる万理の言葉を理解しながら飲み下して、ようやく出てきた音ちゃんの存在をもう一度尋ねる。そうすれば、彼女はふわりと笑った。
「ひのちゃん、最初にわたしに会った時。
……おかしいと、思わなかった?」
「………」
そう、それだ。
なぜか彼女と初対面で話をした時、わたしの中にはひどく違和感が残った。その話は誰かにしたと思うけど、違和感の正体が何なのか結局自分ではつかめなかった。
「みんなから聞いてた計画は、倉庫ではじめて会ったっていう設定なのに。
……ふたりきりで話をしたとき、名乗られてもないのにわたしは「ひのちゃん」って呼んだんだよ」
「あ、」
はっと、違和感の正体が、ようやく姿を現した。
──そうだ。わたしはあのとき、みんなと一緒にいた部屋でも、音ちゃんとふたりになったときも「倉敷ひの」と名乗った記憶がない。
「正直、あれはわたしが勝手にやったことだから、もしバレちゃってたら間違いなく作戦は失敗だった。みんなごめんね、勝手なことして。
……でもね、わたしほんとは気づいてたの」