祐也と私と一平先輩
小坂くんは少し困った顔をした。

「違うってっ!お前は清良先輩より可愛いし、玲奈よりも優しい。....勉強に関してはは触れないでおく」


最後の言葉はお茶を濁すみたいに小さくつぶやいた彼だったけど、「あーっ!!」
自分の頭をかきむしった。


「そうじゃないんだよっ!勉強がすべてじゃないだろっ。綾乃はそれ以外に沢山魅力的な部分があるんだよっ」


私の両肩をつかむと、真剣な瞳で私を見つめる。


「う、うん」彼の勢いに気おされて短く答えた。


いささか興奮気味な自分に気づいて小坂くんはふうっと息を吐いた。


「一平さんはこんなに感情を高ぶらせないよな。そんなとこ大人だよ、あの人。
きっとそのほうが説得力あるんだろうな」


自嘲気味に笑うと私から手を離し、また金網に”ガシャン”と派手な音を立ててもたれかかった。


「一平さんの愛し方を否定する気もないんだ。
あの人は俺より大人だし、綾乃のすべてを受け入れて守るだけの度量があるから。
ただ俺にはそれが出来ない」

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