姫、私は誓います。
姫と言葉通りすれ違う度に目で追っていた俺に口を酸っぱくしてこう言っていた。

「叶わない恋なんて止めろ。応援してやりたいが雲は掴めないだろ」

雲が掴めない事は分かっていた。だから、そう言ってくるジンルークを責める事は出来なかった。でも、姫一人に仕えるようになってジンルークの考えは変わったんだ。というよりは俺と一緒で分かっていながらのめり込んでしまった。ジンルークも姫に恋をしたんだ。そうなった今はもう何も言っては来ない。たぶん自分もそうなっている以上、俺に忠告できる立場ではないと思い始めたんだろう。ジンルークならやりそうな事だった。
ただ、ジンルークと俺の愛し方は違った。俺は彼女のそばで彼女を守っていきたかった。でも、ジンルークは遠くにいようと彼女がこういう人である事を伝え、信じ続けていた。俺だって彼女を信じ、愛してはいるけれど離れて暮らせるほど俺は強くない。ジンルークは自分が愛しているという事実で雲を眺めようとしている。
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