街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
俺がそういうと、父さんは黙った。
……けど、またすぐに喋り始めた。
「俺、若い頃は貿易関係の仕事をしてて、船に乗ってたんだよ。」
「え、まじかよ。」
「そ。
俺本当はここが地元じゃねーんだよ。
だけど、海外からの帰り道に沖縄によって、そこで母さんと知り合ってな。
たった三日しかここにはいなかったけど、でも俺はすぐに母さんに惚れて、三日しかいなかったくせして告白までしたんだよ。俺は。」
「……意味わかんねぇ。」
「ま、もちろん本気になんかしてもらえなかったけどな。
それから三ヶ月たって、また沖縄に来るときがあって、その時も母さんに会うためにわざわざあの店で弁当買ってな。
そんなことを四年くらい続けた。
それで母さんもやっと折れたってわけ。」
「付き合ったわけな」
「そうはいっても俺の職場は関東で、母さんは沖縄だったし、俺は一回出航すると月単位で戻ってこないから、ぜんっぜん会えなかったんだけど
まぁダメもとでプロポーズして、母さんはそれを受け入れた。
いつまでもここで、俺の帰りを待ってるって。
まぁ俺は結局30手前で船から降りて本部勤務になったから、母さんつれて東京で暮らしてたんだけどな。
な?だから会えないなんて関係ねーんだよ。
どんだけ本気で、どんだけあいてを信じられるか、自分を信じられるかだよ。
最初っから諦めんな。
繋がってればな、いつか会えるんだよ。」
「……そんなうまくいくとは思えねーけど」
「ま、諦めるなら反対はしねーけど。
それより野菜洗うか。そろそろやらねーと昼に間に合わないしな。」
「……はいはい。」