街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「ん、どうぞ。」
「さんきゅ。」
家の前につけば、心優がドアを開けて待っててくれて
普通、こういうことは男側の仕事な気がするけど、でも自然にそんなことができる心優はやっぱりできる女だ。
心優に開けてもらったドアから中に入れば
「Happybirthday!!!」
めちゃくちゃうざい顔をした智樹が大声を出していた。
「……って、え?誕生日?」
「おいおい、自分の誕生日忘れんなよ~
今日は大翔の誕生日じゃねーか!」
「あー、俺の…」
もう長いことお祝いなんてされてなかったから忘れてたわ。
「大翔、見て。」
心優に促され、智樹の後ろを覗くと、フルーツの乗った、すげーイビツなケーキが1つ。
そして真ん中にはでっかく『17』と書かれていた。
「一昨日だったかな、智樹から聞いたの。
そういえば大翔の誕生日もうすぐだな、って。
だから急だけど、みんなで作ったの。」
「っていっても河合くんは盛り付けだけで、私はご飯を作ってたから、ほとんど仁科さんが作ったんだけどね。」
「え、心優が?一人で?」
「なに、まさかまずそうだから食べないとか言わないよね?」
「……食べますよ。」
「智樹、ナイフ持ってきて。」
「ほいほーい!」
智樹は心優にパシられ、智樹は向こうからナイフを持ってきた。
で、心優が切ってくれたんだけど中が普通のケーキとは違った。
「なにこれ、ホットケーキ?」
「だって普通にスポンジ焼いてたら間に合わないから…
大丈夫、味見はしてあるから。
はい!」
そういって差し出されたケーキを、一口大に切って口へ運んだ。
ホットケーキの甘さに、生クリームの甘さに、フルーツの酸味。
それがまずいはずもなくて
「……大翔?どうしたの?」
その懐かしい味に、俺の目からは勝手に泪が流れていた。
「…うまいわ。すげーうまい」
なんかもう我慢できなくて
「……ちょい、悪い」
俺はまた、畑の方に戻った。