街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「大翔ってさ、たまに気持ち悪いくらい似合わないこと言うよね。」
「うるせーわ!
ま、俺も俺なりに落ちた時期とかあったわけよ。
反抗期真っ最中にひとりになったわけだし?
俺にもあるわけよ、届かない"ごめんなさい"ってやつ。
でももう会えないわけだし、抱えてるだけじゃ意味ないだろ。
俺も、いつまでも自分が可哀想だとか思わないことにしたんだよ。
親が早くに死んじゃうなんて、別に珍しいことでもないし。」
人が死ぬ、なんて珍しいことじゃない。
毎日何人もの人が生涯に幕を下ろす。
人間として、生き物として生まれてきた運命として、受け入れるしかないんだよ。
それがたとえ、自分で幕を下ろしたやつだとしても。
残されたものとして、その死を無駄にはできない。
「ま、お前はまだ乗り越えられてないみたいだけどさ
お前も幸せ者だってこと、忘れんなよ。」
「幸せ?どこが」
「そうやって、過去の思い出に引きずられてもう誰とも関わろうとしないところ。」
「……は?」
「そうやっていつかくる別れを知っていて、それを恐れているところ。
そうやって怖がれるのは、本当に大切な人がいるやつだけだから。
それだけで十分幸せじゃね?と、俺は思うね。
それがもう会えない相手だったとしても。」
「すごいポジティブ…」
「そりゃだって俺はお前と違って楽しく生きていたいから。
お前と違って。」
「わざわざ2回言わなくていいわ」
「そういやさ、そんだけビビってんのに
なんで俺と智樹と仲良くなろうと思ったわけ?」
今思ったわ。
こいつ、もう誰も失いたくないって考えてるやつなのに、なんで俺らとは友達になろうとしたんだろ。
……やっぱ、俺がしつこすぎたか?
「……そんなの、そこまで言う大翔ならわかるんじゃない?」
「は?いや、わかんねーけど。」
なんだよ。さっさと言えよ。
「バカだね、察しなよ。
私は大翔のことも智樹のことも、嫌いだからだよ。」
「……は?」
「大翔の言うとおり、私は怖がってるだけかもね。
少しすっきりしたよ。
大翔も智樹も私の嫌いな人だから、失うことに怖がる必要がないから平気なのかも。」
そうやって、心優はまた上品に笑う。
俺はやっぱり、こいつの笑い方が大嫌いだ。