街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



……なんつーか
そりゃ好かれてる、まではいってない気はしてた。
してたんだけど…

やっぱりこいつは俺らのことが嫌いなんだと思うと

こんなに毎日喋って、連絡とって、飯まで行くのに
まだ俺のことが嫌いなんだと思うと

…俺は、こいつと友達になったと思っているから

それを思えば思うほど、
胸の奥底から涙が出てきそうになる。


心優が学校で話すのは智樹だけで、智樹がそれを特別に思っているように

俺もどこかで、俺にだけ話してくれたこと、俺だけに連絡先を教えていることに、特別意識でもあったのかな。

なんだかんだ言いつつ、俺のことはもう、本当の友達だと思ってくれているのかと
俺のことは受け入れてくれているものだと

勝手に、勘違いしていただけなのかもしれない。


「大翔、どうしたの」


こうやって俺の名前を呼ぶことに、優越感を感じていたのかもしれない。
俺の名前を呼び、俺に話しかける。

心優から話しかけるのは俺だけだから
勝手に、俺だけは特別なんて勘違いしていただけなのかもな。


「別に。なんでもねーよ」


こいつは俺のことが嫌い。

そんなわかりきっていたことなのに、改めて知って
どうして俺はこんなにショックを受けているんだろうな。


「……あのさ」


「なに?」


「俺と智樹だったら、どっちのが嫌い?」


「大翔。間違いなく。」


「……そ。」


はぁ、俺…なんでそんなショック受けてんだよ。
女に嫌われるなんて、もう何度も繰り返してきたことじゃねーかよ。


……大丈夫、だよな。
明日の今ごろにはもう忘れてる。
明日にはまた笑えてる。

今の話なんてすべて忘れてる。

そうやって生きてきたんだろ。


こんな好きでもない、はたまたタイプでもない女にはっきり嫌いと言われて
それがどうしたって話だろ、俺。



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