君の本気に触れた時…
それから私のアパートが見えて来てもうすぐで家の前に着く…という頃

少しだけ前を歩いていた彼が急に立ち止まった事に気づかなかった私は、そのまま彼の背中にトンッとぶつかった。

打った鼻を押さえながら急に止まった彼に文句を言う。


「急に止まったら危ない…でしょ…」


語気の強かった私の声が、どんどんと弱くなっていった…。

私の方にゆっくりと振り返った彼の表情が…すごく真剣だったから。


「ごめん…痛かった?」


彼の手がまっすぐ私に伸びて来て顔に触れそうになったから… “もう大丈夫 ” と慌てて言った。

なんだかすごく落ち着かない気持ちになって、すぐ目前に見えているアパートに帰ろうと足を動かした…その時、彼が私の名前を呼んだ。


「理央さん…。」


先輩でも先生でもない… “理央さん” と呼ばれた事に一瞬だけ胸がドキッとした。

けど…気のせいだと思いたかった。
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