夢物語【完】
「わかった。わかったから、その状態じゃ話しにくいしフローリングじゃ冷たいやろうからベッドに座り?」
嗚咽を堪えた震える声で返事をすると向かい合ったままであたしの手を握りしめた。
陽夏ちゃんにしては珍しい。
「京平と、なんかあった?」
その言葉だけで再びボロボロと泣き出す陽夏ちゃん。
あ~、もう何してんのよ!と呆れるくらいで握られてない方の手で頭を撫でてあげる。
「今は京平もおらんし、あたしが聞いてもええことなら聞くよ」
そういうと小さく頷いて嗚咽と混じって言葉が途切れんようにするためが口を開いて話そうとすればまた閉じてを繰り返す。
普段、こんなことせんけど陽夏ちゃんを自分の足の間に入れて抱きしめて肩にもたれるように抱きしめる。
もしかしたら顔を見て言いにくいんかもしれん、と思ったから。
女同士でも言いにくいことってあるし、それが今かもしれんから。
そうしたら陽夏ちゃんはギュッと服を握りしめて深く息を吐いた。
「生理が、こないんです」
あぁ、そんなこと。
そんな泣くほどのことじゃないやん、も~びっくりしたし。
「‥‥て、え?!それって」
それって、もしかして、アレですか?
噂に聞くアレですよね?
「ちゃんと、調べた?」
陽夏ちゃんは首を左右に振るだけで、どうやら初めてのことらしくて不安でいっぱいやったらしい。
ストレスとかで遅れることもあるって言うし、もしかしたら違うかもしれんし。
「とりあえず、簡易でもちゃんと調べんとどうかわからんからさ?京平には言うてないんやんな?」
「言えないですよ!やっと軌道に乗ったときなのに迷惑かけれないですから…」
「うん」
そうやね、とは言えんかった。
あたしも経験がないわけじゃないから不安なんはわかるし、ほんまにそうならどうしようって思いは理解できる。
本当なら嬉しい。
嬉しいことには変わりないけど、それだけで済ませられるほど甘くないのも理解してるから苦しい。
「ちゃんと、調べよう」
はい、と小さく頷いた陽夏ちゃんは鞄からコンビニの袋を取り出し、細長い箱を取り出した。
そして、お手洗いお借りしていいですか?と聞いて二階にあるトイレに入った。