夢物語【完】

用意はしてたけど一人じゃ怖かったのか、と少しほっとした。

確かに今はバンド的にはバッドタイミングに違いない。
ツアーも残ってるし、京平はまだ23で陽夏ちゃんは19で学生やし。
出来てたら出来てたで喜びそうな気するねんけどな〜とか他人事のように考えてたらドアが開く音が聞こえて思考が止まった。

「一緒に、見てもらっていいですか?」
「もちろん」

あたしが手招きをして呼ぶと陽夏ちゃんはまたベッドの目の前で正座をした。

「怖い、です」
「うん」
「嫌われたら、どうしよ、」
「それはない。絶対ないから」

涙を浮かべた陽夏ちゃんが言い終わる前に遮った。
あんなに溺愛してる京平が嫌うわけない。
むしろ永久的に自分のモノになったって飛んで喜ぶ画があたしには見える。

「結果はどうであれ、陽夏ちゃんを嫌うことは絶対ないよ」

根拠なんかないけど、京平はむしろ陽夏ちゃんに捨てられないように必死やと思うけど、とは言わんかった。

「陽夏ちゃんが見たいタイミングに見よう。結果がどうであれ、ちゃんと京平に話すことは約束して」

どうせ今も消えた陽夏ちゃんの様子が気になって狂ってるやろうし、この様子じゃ上手く隠せてるようには見えん。

おずおずと箱に手を伸ばし中を取り出す。
結果は・・・

「陰性、だ」
「・・・よかった?」

あからさまにホッとしたあと、寂しそうな顔をした陽夏ちゃんに意地悪のつもりで聞いた。

「よ、かった、です。でも、ちょっと残念?」

その言葉に二人で笑いあった。

「えらい楽しそうじゃん」

ノックもなしに開いたドアの向こうには京平、と高成が立ってる。
もちろん京平の顔は怒ってて思いっきり睨まれてる。
もちろん、あたしが。

後ろの高成は溜息吐いてあたしを見た。
・・・怖いんですけど?
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