夢物語【完】
言葉とは逆に伸ばされた手で撫でられる髪がくすぐったい。
こんなことでわかるわけないって毎回思うけど、こんなことで愛されてるって感じるあたしは安上がりな女なんやろう。
自然に目を閉じてその感覚に全身を委ねたくなる。
「久しぶりに会いに来た彼氏を無視して放置するし、サラに構いっぱなしで迎えにも来てくれないし、部屋に来てみればサラと抱き合って、挙げ句、俺より先にキスされてキスして誰と誰が恋人だよって話じゃん」
完全に拗ねモード全開の高成。
触れてた髪を今度は指に絡ませてくるくると弄んでからキスを落とす。
その一連の動作がとても綺麗で格好良くてドキドキする。
普通の男の人がしてもキザにしか見えんのが高成なら当たり前のように見える。
その相手があたしって、なんて幸せもんなんやろう。
自然に顔が紅潮してくのがわかる。
それに気付いた高成は微笑んで頬にキスを落とした。
す首の後ろに腕を回されて、高成にしてもらう初めての腕枕。
そのまま引き寄せられて額、頬、鼻の先、まぶた、顔中にキスをしてくれる。
くすぐったいけど気持ちいい。
一通り終わると目があって微笑みあう。
今度はあたしが頭を起こして高成がしてくれたようにキスをする。
額、まぶた、鼻の先、両頬、そして、また額にキス。
「ちょっと」
「なに?」
キスをしてる間されるがままになってたけど、あたしが高成を跨いでる状態。
これはヤバイでしょう?
「大丈夫、寝てるから」
「そういう問題じゃな、」
言い終わる前にキス。
胸に置いてた手は高成に後頭部と背中に置かれた手によって引き寄せられたことで自然と体がくっついた。
いつもされるのと逆だと思ったら恥ずかしくなって顔をあげようとしても高成は許してくれず、そのまま胸に頭を押さえつけられた。
もう、心臓もたん。
直接感じる体温に高成の心臓の音。
恥ずかしいけど安心する。
「・・・イブなのに」
突然のボヤキ。
これには謝るしかない。
てか、今日イブだった!
「忘れてた!!」
勢いよく起きあがって高成の上から降りて棚に置いてた箱を高成に差し出した。
「なに?」
「クリスマスプレゼント!」
差し出したプレゼントに手を差し延べることなく受け取る様子を見せん高成に不安の芽が生える。
受け取らんっていうことは“いらん”ってこと‥?
ぐっと目頭が熱くなるのに気が付いて堪えると思いっきり深く重い溜息が聞こえて思わず顔を上げると頭を抱えてガシガシと掻きむしる。
そして再び溜息を吐いた。