夢物語【完】
「ナリ、大丈夫?」
ようやくあたし達の元へ来た高成を心配そうに見つめる悟さん。
やっと帰ってきたって呆れた顔で見てる京平と涼介。
先程の雰囲気なんてなかったように微笑む京平の彼女。
そして、顔をあげれんままのあたし。
「遅ぇよ」
「今日は押しが強かったしね」
「お前、女嫌いだもんな」
空気の読めない涼介の最後の言葉のせいで更に顔があげれんくなった。
こうしてメンバーといられるのはあたしが高成の彼女だからで、そうじゃなかったらあの女たちと同じように高成に群がってたかもしれん。
そう思うと高成の顔が見れんくなった。
色んなことに納得してしまう自分が“普通”に思えた。だけど、この上なく複雑でそう思った自分が心底嫌にもなった。
自分の今の気持ちを肯定するようで最低な自分に嫌気がさした。
「涼、ごめんな」
メンバーが声をかけてくれてるのを全て一言で交わして足を止める事なく高成はあたしの元へ来てくれた。
「う、ううん。大丈夫」
一番にあたしの元へ来てくれたのに。
高成が悪いわけちゃうけど謝ってくれたのに。
温かい大好きな手で頭を撫でてくれたのに。
あたしは高成を見れない。
何かやましい気持ちでもあるんじゃないかって疑われても仕方ないくらいあからさまな態度。
現実を突き付けられて、見ないようにしてた心を鋭く突かれて、自分の気持ちに自信がなくなって不安になったあたしの元に真っ直ぐ来てくれた高成の目を見れない。
絶対変やって思われる。現に無言で見つめられてる。
他のメンバーは何も言わんけど痛いくらいの視線を感じる。
なんか喋らなあかんって思えば思うほど焦って真っ白になってく頭ん中。
どんな言葉でもいい。大変やったね、とか悟さんに言われたけど、大丈夫?とか、この際、女の子嫌いなんや?でも何でもいい。
何か話しかけんと変に思われると必死になって頭を動かすあたしの思考を止めたのは、「俺ら、このあと用事あるから行くわ」と言ってあたしの肩を抱いて歩き出した高成だった。
「また明日」と言った涼介の声で振り返ると涼介と京平と彼女はすでに後ろ姿で悟さんが優しく微笑んで手を振ってくれた。手を振り返そうと思ったけど、しなかった。というか、出来んかった。
あたしの心情を全て察してるに違いない悟さんが今のあたしをどう思ってんのかわからんけど、今は振り返したらあかん気がした。
優しい悟さんやから『いいんだよ』って言うてくれる気がしたけど、やっぱり無理やった。
あたしがメンバーと親しくしていいのはまだ早すぎる。
ちゃんと自分の気持ちが整理出来て、本当の意味で高成の彼女になれてからだ。
高成に抱かれた肩が熱い。緊張で心臓が動く。
嬉しいのに心にもやがかかって素直に喜べん。
駐車場までの数分間あたし達は一度も会話を交わすことはなかった。
幸せそうに手を繋いで笑いあう恋人達が行き交う大通りをひたすら走る。
並んだショップの光で街灯なんかいらんくらい明るい。なのに、あたしの心だけまだ灰色に染まったまま。
「じゃあ、行こっか」
そう言って向かってる先はあたしの家。車に乗り込むなり自宅へのナビをしろって言われて助手席に座るあたしはさっきから“そこ右”と“そこ左”しか言うてない。
「涼の両親に挨拶したいんだ」
何を考えてんのかわからん高成の行動を黙って見てたら教えてくれた。
どうやら高成は観光を理由にしたわけじゃなく、あたしの両親に挨拶するのがメインやったらしい。
自分のことを知ったら、きっと不安になるやろうし、信じてもらえず疑われる前に挨拶しとこうって思ったらしい。
仕事が音楽たし、将来も見えない自分を受け入れてくれるかどうかわかんないけど、て言うてくれた。
その言葉を聞いて胸が熱くなった。そんな風に考えてくれてることが嬉しかった。
ようやくあたし達の元へ来た高成を心配そうに見つめる悟さん。
やっと帰ってきたって呆れた顔で見てる京平と涼介。
先程の雰囲気なんてなかったように微笑む京平の彼女。
そして、顔をあげれんままのあたし。
「遅ぇよ」
「今日は押しが強かったしね」
「お前、女嫌いだもんな」
空気の読めない涼介の最後の言葉のせいで更に顔があげれんくなった。
こうしてメンバーといられるのはあたしが高成の彼女だからで、そうじゃなかったらあの女たちと同じように高成に群がってたかもしれん。
そう思うと高成の顔が見れんくなった。
色んなことに納得してしまう自分が“普通”に思えた。だけど、この上なく複雑でそう思った自分が心底嫌にもなった。
自分の今の気持ちを肯定するようで最低な自分に嫌気がさした。
「涼、ごめんな」
メンバーが声をかけてくれてるのを全て一言で交わして足を止める事なく高成はあたしの元へ来てくれた。
「う、ううん。大丈夫」
一番にあたしの元へ来てくれたのに。
高成が悪いわけちゃうけど謝ってくれたのに。
温かい大好きな手で頭を撫でてくれたのに。
あたしは高成を見れない。
何かやましい気持ちでもあるんじゃないかって疑われても仕方ないくらいあからさまな態度。
現実を突き付けられて、見ないようにしてた心を鋭く突かれて、自分の気持ちに自信がなくなって不安になったあたしの元に真っ直ぐ来てくれた高成の目を見れない。
絶対変やって思われる。現に無言で見つめられてる。
他のメンバーは何も言わんけど痛いくらいの視線を感じる。
なんか喋らなあかんって思えば思うほど焦って真っ白になってく頭ん中。
どんな言葉でもいい。大変やったね、とか悟さんに言われたけど、大丈夫?とか、この際、女の子嫌いなんや?でも何でもいい。
何か話しかけんと変に思われると必死になって頭を動かすあたしの思考を止めたのは、「俺ら、このあと用事あるから行くわ」と言ってあたしの肩を抱いて歩き出した高成だった。
「また明日」と言った涼介の声で振り返ると涼介と京平と彼女はすでに後ろ姿で悟さんが優しく微笑んで手を振ってくれた。手を振り返そうと思ったけど、しなかった。というか、出来んかった。
あたしの心情を全て察してるに違いない悟さんが今のあたしをどう思ってんのかわからんけど、今は振り返したらあかん気がした。
優しい悟さんやから『いいんだよ』って言うてくれる気がしたけど、やっぱり無理やった。
あたしがメンバーと親しくしていいのはまだ早すぎる。
ちゃんと自分の気持ちが整理出来て、本当の意味で高成の彼女になれてからだ。
高成に抱かれた肩が熱い。緊張で心臓が動く。
嬉しいのに心にもやがかかって素直に喜べん。
駐車場までの数分間あたし達は一度も会話を交わすことはなかった。
幸せそうに手を繋いで笑いあう恋人達が行き交う大通りをひたすら走る。
並んだショップの光で街灯なんかいらんくらい明るい。なのに、あたしの心だけまだ灰色に染まったまま。
「じゃあ、行こっか」
そう言って向かってる先はあたしの家。車に乗り込むなり自宅へのナビをしろって言われて助手席に座るあたしはさっきから“そこ右”と“そこ左”しか言うてない。
「涼の両親に挨拶したいんだ」
何を考えてんのかわからん高成の行動を黙って見てたら教えてくれた。
どうやら高成は観光を理由にしたわけじゃなく、あたしの両親に挨拶するのがメインやったらしい。
自分のことを知ったら、きっと不安になるやろうし、信じてもらえず疑われる前に挨拶しとこうって思ったらしい。
仕事が音楽たし、将来も見えない自分を受け入れてくれるかどうかわかんないけど、て言うてくれた。
その言葉を聞いて胸が熱くなった。そんな風に考えてくれてることが嬉しかった。