夢物語【完】
返事はせずにさっきと同じように肩に頭を乗せて一緒にアルバムをみる。
高成は胡座をかいてた足を崩して右足を前に出し左足はあたしが隣に座りやすいように寄せてくれた。
あたしの左肩にあった手はいつの間にか腰にあってもっと近くに引き寄せられた。
背もたれがないせいでちょっと腹筋が痛かったけどこんなにくっついてれんねやったらって必死に堪えた。
でもそれは結局バレて、というか気付かれて、あたしが座ってたベッド側に移動して同じように座り、またアルバムを見はじめた。
なんとも言えん恥ずかしさ。
移動するときに自分の行動に恥ずかしくなって移動した後、隣に座ったけど冷静になればなるほどさっきの自分が恥ずかしくて距離をとったら高成に引き寄せられた。
顔が赤くなってくのがわかる。
心臓がバクバクするのがわかる。
さっきは嫉妬心で無意識やったけど、てゆうか、無意識って怖い!
そんなあたしの心情を察して遊んでんのか、はたまた無意識なんか肩に置いてた左手を緩めて肩に移動したかと思うとスッと顔の前を通り過ぎ、前髪に触れた。
何かと思って高成の顔を見上げるとフッと微笑んでそのまま額にキスが落ちてきた。
「でこっぱち」
うわっと思って勢いよく隠したけど後の祭り。
もう遅いよ、と笑われた。
ヤバイ、かっこよすぎる。
これでときめかん女の子はおらんと思う。
それくらいキラキラしててきゅんってする。
目が合うと微笑んでくれて恥ずかしくなって俯いてしまう。
でももっと見てたくてもう一度見上げると、真剣な瞳であたしを見てる高成がおった。
やっぱりあたしって甘い雰囲気が続かんねんなぁ、て少し残念になった。
っていうのは半分本音で、もう半分はごまかすため。
母があたしの部屋に向かわせた理由も高成が言いたいこともわかった。
「な~に怖い顔してんのよ!」って言ってごまかすことも出来た。けど、それは今後を左右することで今を逃したらもう元には戻れん気がする。いや、戻れん。
あたしも今なら素直に話せる気がした。
やっぱり侮れん母。いや、あたしの不信さに気付いただけやろうけど。
高成はあれから気付いてて、でも言わんくて、あたしがどう反応するか見てたんかもしれん。
迷ってるあたしに挨拶に行くって言うたけど止めるわけでもなく素直に家まで案内するし、何考えてんやって思ってたんかもしれん。
さっきの質問に答えんかったから怒ってんのかもしれん。でも高成やから全部わかってるんかもしれん。
考えたくないけど、前の彼女の時に同じ経験してんのかもしれん。
これはあたしの想像でしかないけど。
見つめられてた瞳がだんだん弱くなるのに連れてあたしを抱き寄せる力は強くなる。
そんなことせんくても逃げたりせんのに。
あたしはずっとこうしてたいって思ってんのに。
そうさせたのはあたしやのに高成を見てると可愛く思えて表情を緩めてしまった。
それも高成は悪くとったらしくあたしを離そうとはせんかった。