夢物語【完】
あたしが話し続けてる間、高成が何か言おうとしてたけど、
「昨日の今日で態度を変えて最低やってわかってる。でも高成と離れたくないんやもん!また離れ離れになるのに電話もでけへん、名前も呼んでくれん、とか嫌なんやもん!高成の一番はあたしでいてほしいんやもん!」
「ちょっと、待…」
「口悪いし、可愛くないし、高成の仕事の事なんか理解できんし、自己中やし、優柔不断で高成に迷惑かけてばっかやけど」
「涼、ちょっと落ち着いて」
「でも!もっと知りたいし、もっと理解していきたい。もっと高成を、……?!」
構わず喋り続けるあたしを止めたのは、
「いいかげん、俺にも喋らせろ」
無視して喋りやがって、と拗ねながら抱きしめられて感じる高成の温もりと鼓動やった。
それからは散々やった。
完全に拗ねた高成は
場所を考えろ、
声がデカイ、
喋りすぎ、
俺を置いていくな、
当たり前だ、
て言うた挙げ句、
「お前はバカだ」
まで言われた。
多分、初めて言われたと思う。
人間付き合ってりゃいつかは素が出てきてアホだバカだって言い合う日があたし達にも来るんやろうと思ってたけど、こんな素で言われると思ってなかった。
言われる流れとしては言うべき場所で言うたな、て感じやけど。
いや、そんな冷静に分析してる場合じゃない。
目の前の高成がどうやら拗ねてるんではなく怒ってるらしい。
「黙って聞いてりゃ昨日から好き勝手言って、だいたい“もう一回彼女にして下さい”ってなんなの?別れたつもりだった?俺は別れるつもりないって言ったよな?これからだって言ったよな?全部流してたわけ?」
完全に怒ってるらしい高成の言い分に何も言えんくて黙って聞いてることしかできん。
こんな状況でも“高成の口調が変わった”なんて考えてるあたしは相当空気が読めんらしい。
「“才能あっても趣味は悪い”?“アホ”とも言ってくれるわ。んで、今は甘えるどうのこうのって。涼は俺にあと何回言わせりゃ気が済むの?」
高成が怒るのも無理ない。
あたしは昨日と今日で二転三転してる。
そんなあたしに今まで怒らんかった方がおかしい。
それでも口調はキツくても腰に回した手は離されず掴んだまま。
そんなところが甘いんやって、それが空気の読めんあたしの顔を緩めるんやって。
「なに笑ってんの?」
「い、いや」
「いい度胸じゃん」
「え?!あ、…た、高成?」
抱きしめられたまま愉快犯みたいな顔して塀に追いやられる。
背中には壁、顔の横には高成の手、腰にはずっと回されたままの手。
「あの...?」
ニヤリと笑ったその顔は見慣れんくて、この先が読めんくて焦る。
それと同じくらい距離が近くて高成の匂いにクラクラする。
「絶対、離さねぇ」
ドキドキして思わず目を閉じた。
僅かに触れる高成の口唇が首筋に触れる度にびくつくあたしにふっと笑った高成は、
「た、高成?!」
「ちょっと黙ってろ」
首筋に顔を埋めて舐められた、と思ったらきつく吸い付いた。
「これで許す」
顔を上げた高成は満足げで突然のことに放心状態のあたしは高成の服を握りしめたまま真っ赤になるしかなかった。
このシルシがどういう意味をもつのかは知ってる。
恋愛経験値が低いあたしでもそれくらい知ってる。
「な、な、な...」
「慌てすぎ」
バクバクする心臓を必死に抑えるあたしとは正反対の高成は余裕の表情で笑ってる。
首筋に手を当てる。
高成の口唇の感触が残って熱が集まってくる。
笑顔もカッコイイ……けど、そんなこと言うてる場合じゃない。
この位置は、この位置は今付けたらあかん場所やってわかってやってんやろうか。
これからみんなに会うってゆうのに服にも髪にも隠れん位置に付けられてる。
まだバクバクする心臓はまた違う意味でおさまる気配がない。
「わざとだから。見えないと意味ないし」
開いた口が塞がらんって、こうゆうことなんやって初めて知った。
「変な顔!いいじゃん、マーキング」
首筋にそっと触れて伏し目になった睫毛が軽く揺れて綺麗。
見つめてたら気付くのが遅くなったけど、前髪が触れて自然に瞼がおりて小さくキスをした。
「昨日の今日で態度を変えて最低やってわかってる。でも高成と離れたくないんやもん!また離れ離れになるのに電話もでけへん、名前も呼んでくれん、とか嫌なんやもん!高成の一番はあたしでいてほしいんやもん!」
「ちょっと、待…」
「口悪いし、可愛くないし、高成の仕事の事なんか理解できんし、自己中やし、優柔不断で高成に迷惑かけてばっかやけど」
「涼、ちょっと落ち着いて」
「でも!もっと知りたいし、もっと理解していきたい。もっと高成を、……?!」
構わず喋り続けるあたしを止めたのは、
「いいかげん、俺にも喋らせろ」
無視して喋りやがって、と拗ねながら抱きしめられて感じる高成の温もりと鼓動やった。
それからは散々やった。
完全に拗ねた高成は
場所を考えろ、
声がデカイ、
喋りすぎ、
俺を置いていくな、
当たり前だ、
て言うた挙げ句、
「お前はバカだ」
まで言われた。
多分、初めて言われたと思う。
人間付き合ってりゃいつかは素が出てきてアホだバカだって言い合う日があたし達にも来るんやろうと思ってたけど、こんな素で言われると思ってなかった。
言われる流れとしては言うべき場所で言うたな、て感じやけど。
いや、そんな冷静に分析してる場合じゃない。
目の前の高成がどうやら拗ねてるんではなく怒ってるらしい。
「黙って聞いてりゃ昨日から好き勝手言って、だいたい“もう一回彼女にして下さい”ってなんなの?別れたつもりだった?俺は別れるつもりないって言ったよな?これからだって言ったよな?全部流してたわけ?」
完全に怒ってるらしい高成の言い分に何も言えんくて黙って聞いてることしかできん。
こんな状況でも“高成の口調が変わった”なんて考えてるあたしは相当空気が読めんらしい。
「“才能あっても趣味は悪い”?“アホ”とも言ってくれるわ。んで、今は甘えるどうのこうのって。涼は俺にあと何回言わせりゃ気が済むの?」
高成が怒るのも無理ない。
あたしは昨日と今日で二転三転してる。
そんなあたしに今まで怒らんかった方がおかしい。
それでも口調はキツくても腰に回した手は離されず掴んだまま。
そんなところが甘いんやって、それが空気の読めんあたしの顔を緩めるんやって。
「なに笑ってんの?」
「い、いや」
「いい度胸じゃん」
「え?!あ、…た、高成?」
抱きしめられたまま愉快犯みたいな顔して塀に追いやられる。
背中には壁、顔の横には高成の手、腰にはずっと回されたままの手。
「あの...?」
ニヤリと笑ったその顔は見慣れんくて、この先が読めんくて焦る。
それと同じくらい距離が近くて高成の匂いにクラクラする。
「絶対、離さねぇ」
ドキドキして思わず目を閉じた。
僅かに触れる高成の口唇が首筋に触れる度にびくつくあたしにふっと笑った高成は、
「た、高成?!」
「ちょっと黙ってろ」
首筋に顔を埋めて舐められた、と思ったらきつく吸い付いた。
「これで許す」
顔を上げた高成は満足げで突然のことに放心状態のあたしは高成の服を握りしめたまま真っ赤になるしかなかった。
このシルシがどういう意味をもつのかは知ってる。
恋愛経験値が低いあたしでもそれくらい知ってる。
「な、な、な...」
「慌てすぎ」
バクバクする心臓を必死に抑えるあたしとは正反対の高成は余裕の表情で笑ってる。
首筋に手を当てる。
高成の口唇の感触が残って熱が集まってくる。
笑顔もカッコイイ……けど、そんなこと言うてる場合じゃない。
この位置は、この位置は今付けたらあかん場所やってわかってやってんやろうか。
これからみんなに会うってゆうのに服にも髪にも隠れん位置に付けられてる。
まだバクバクする心臓はまた違う意味でおさまる気配がない。
「わざとだから。見えないと意味ないし」
開いた口が塞がらんって、こうゆうことなんやって初めて知った。
「変な顔!いいじゃん、マーキング」
首筋にそっと触れて伏し目になった睫毛が軽く揺れて綺麗。
見つめてたら気付くのが遅くなったけど、前髪が触れて自然に瞼がおりて小さくキスをした。