夢物語【完】
あたしと高成は4年間も思い続けて4年越しの成就。
付き合ってからも2回しか会ってなくて2回目で早くも別れの危機を迎えて、また遠恋に戻る。

高成が会いに来てくれたのに恋人らしいことなんか初日のデートだけで最悪な再会にしてしまった。
結局、元サヤ?に戻ったから話そうと思えば話せたのにメンバーの勢いに負けて二人では全然喋れてない。

次はあたしから会いに行けばいい話なんやけど、やっぱり今日じゃないとあかんと思うし、また会えんくて声と文字だけになってしまう。

「遠距離ヤです~!涼ちゃんともっと話したいです~!!」

あたしも同じ気持ち、と言えんのは相手が陽夏ちゃんやからで食べ終わってから新幹線の時間まで再度自由時間になったから店の外で挨拶をしてたところ。

店を出てから腕に絡まりついて離れん陽夏ちゃんは小さい子供みたいに嬉しい我が儘を言うては京平に舌打ちされてる。

「また会いに行くから、ね?その時は街案内してくれる?」
「もちろんです!!それまでも絶対、絶対、連絡下さいね?私からも絶対しますから!!」

京平の溜息を合図にあたしと陽夏ちゃんは京平と高成に引きはがされ反対方向に引きずられる。

訳がわからず引きずられながら反対側で「帰りにまた会えるだろ」と呆れた京平に頭を撫でられてる陽夏ちゃんを見ても現状が理解できんかった。

「見送りの時にまた構えばいいだろ」

どうやらこちらも実はご立腹やったようで引っ張られてた腕から掌に移動して強く握られた手にようやく気付いて胸が弾けた。

「笑うなよ」
「高成も妬いた?」
「うるさい。アイツと一緒にするな」

お互い顔を見合わせて笑いあった。
だいたいアイツは心が狭すぎる。
自分優先に見せかけて女にばっか構って、結局尻に敷かれてんだよ。
そう言った。

「前にアイツら大喧嘩したことがあったんだけど、その時のアイツのウザさはありえなかった。八つ当たりはするわ、曲はめちゃくちゃだわ、話し掛けても無視するわ。結局、仕事にならんから悟がサラに連絡して説得してアイツ帰した」

思い出しただけでもイライラするらしく眉間にシワを寄せる高成に、そうなんや~と言いかけて、はたと気付いた。
今、聞き慣れん名前があったような気がする。

「“サラ”って陽夏ちゃん?」

京平の話をしてんねやから聞くまでもなく陽夏ちゃんのことやってわかってんねんけど確認せずにはいられん。
だって、“陽夏ちゃん”って聞くより“サラ”って聞くほうが親密感があるように聞こえるのは、あたしだけ?

「なに、他の女だと思った?」
「ちゃう!確認しただけ」

今の今まで眉間にシワを寄せてた高成が一変して口角を上げた意地悪顔に変わった。

裏高成は表高成よりも意地悪が増す。
人をおちょくって面白がる要素を含んでる。

焦るあたしを見てニヤニヤして……ムカつく。

「心配しなくてもキョウの言い付けだから」
「言い付け?」
「自分の彼女の名前を他の男に呼ばれるのは嫌だって話」

なんちゅう独占欲の強い男。
嫉妬深くて、手の内におらんと荒れ狂う自己中男。

話だけ聞いてりゃそう思うけど、昨日今日と二人を見てたら幸せそうやから、それが二人のスタンスなんやろうな、と思うことにした。
誰が何と言おうと本人達が幸せならなんだっていいでしょうって話。

「涼の場合は今更無理だし」

高成の発言にあたしも?!って振り返ったけど高成は前を見たまま。

目が合わんことに寂しさ感じたりして、ちょっと乙女モード。
自惚れてる自分が気持ち悪くてすぐモード解除して疑問を口にする。

「なんであたしは今更?」

別にそうしてもらいたいわけじゃないけど、みんなから“涼ちゃん”って呼ばれるの好きやけど、一応昨日が初対面なわけで“今更”の内容は気になる。

「だって、初めてあったときに挨拶してたろ?」
「あ、そっか!!」

そういえば、あの時自己紹介したんやっけ?
かなり衝撃的な出来事やった。
だってこのネックレスを落としたおかげで、追いかけてきてくれて。

「だから、みんな涼の名前は覚えてたんだ」

一人で消えちゃったから?と聞こうと思ったけど、あたしの為に・・・って思ったら恥ずかしくなって聞くのはやめた。
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