夢物語【完】
あの時、高成が追いかけてきてれんかったら、あたし達は相変わらずアーティストとファンの関係やった。
こうして手を繋いで並んで歩くこともなかった。
メンバーとご飯を食べることも、不安になることも、恋人同士になることもなかった。
「“運命”なんかなぁ?」
そう考えたらポロッと口から出た。
だって普通じゃ無理な話やん?
何千人っていてる中のあたしを選んでくれた高成。
しかも超普通で平凡な才もないこのあたし。
「だってあたしやで?このあたし。意味わからんや、」
マイワールドにトリップしてたから、あたしがなんやかんや心の中で喋ってる間、高成が話しかけてきてたんかもしれんけど、全く聞こえてなかった。
だから、繋いでた手がクイッと引っ張っるまで高成の足が止まってることに気付かんかった。
「高成?」
名前を呼んでも無反応。
でも瞳だけはあたしに向けられてて、それはライブの時によく見る瞳で。
“真剣”とか“真っ直ぐ”とかそういう感じじゃない。
“それしか見てない”“それしか見えてない”って感じの強い瞳。
それが今はあたしに向けられてて、思わず動けんくなる。
足が動かんくなって高成を見つめるしかなくなると今度は高成から歩み寄ってくる。
ゆっくりと、でも視線はそらさないままで、この先どういう行動に出るか予測できんままドキドキする。
二人がくっつくまで、あと一歩...の所で立ち止まり、手が伸びてくる。
頬に伸びてきた手にピクリと反応したあたしに微笑んだ。
「“運命”に決まってんじゃん。今更なにいってんの?」
そう言った高成は外で人通りもあるのに、それを構わず触れるだけの軽いキスをした。
突然のキスに唖然とするあたし。
「俺、涼を手放す気なんてさらさら無いよ」
それに手放すくらいならあんなタイトル付けないし、と笑った。
何の話?って思ったけど、すぐにわかった。
「もしかして、あの曲?」
「そう。キョウと涼介に超怒られたし。でもキョウも悟も同じような事してんだぞ?怒られる意味がわかんなかったけどね」
そういうとまた手を繋いで歩き出した。
高成はニコニコしながら話すけど、あたしにはかなり恥ずかしいこと。
だって、まさかそういう意味やって思えへんかった。
初めて見たときは「どういう意味やろう?」って思ったけど、電話で聞いてみたらまさかまさかの返事で一瞬言葉失った。
「女の名前使って何が悪いんだって話じゃん。涼も知ってると思うけど“薺”は歌詞が悟だし、“夏陽”は作詞作曲キョウだし。俺が“R”って曲書いたって悪くないと思わない?」
悪くない。
全然悪くないし、むしろすごい嬉しい。
だって高成からかかってくる電話の着信に設定してるもん。
高成が言ってた3曲は全部ラブソング。
高成なんか赤裸々すぎてライブで聴いてて恥ずかしい。
でも一つだけ大好きなフレーズがある。
“誰が何と言おうと僕達の出逢いは運命なんだ。
僕の傍に君がいることがこんなにも幸せで愛おしい”
初めて歌詞を見たとき、感動とかそんなんじゃなくて、単純に嬉しく思えた。
遠く離れてるのに、こうして想ってくれてることが単純に嬉しかった。
ファンはネット上で彼女の存在がどうのこうのって盛り上がってたけど、真相は謎のままだから女の子は自分宛てのように歌詞に惚れ込んでた。
音楽一筋の高成達がこうして恋の歌を書くと誰か一人の愛おしい人を連想させられるのは当然のこと。
「俺らには音楽しかない。音楽が好きで音楽をやることしか脳がない。でもそれを支えてくれる人達がいないと俺達はこうして自由にはできてない。もちろん、それの源はキョウにはサラ、悟には薺だったりする。もちろん俺には涼が必要だし、あの曲はその感謝の気持ちも込めて涼に捧げた曲なんだ」
なんて言ったらええんやろう。
もう、感動しすぎて言葉にならん。
簡単に言葉にするには軽すぎて口には出せんけど、ただ単純に“嬉しい”と思う。
たった半年、気持ちが通じ合ってからたった半年しか経ってないのに、あたしの存在が高成の中でこんなにも大きいんやって初めて知った。
「たった半年だけど、電話でくれる涼の言葉のひとつひとつは涼が思ってるよりも俺には重要でそれが歌になってることって、すごい多いんだよ」
繋いでる手から伝わる温度。
同じ温度を高成の脳まで伝えるには全然足りないって全身が叫んでて、公衆の面前ってことも忘れて横から抱きしめた。
感動で嬉しくて涙も我慢できそうにない。
高成の作る曲にあたし自身が関わってることが嬉しい。
その気持ちがメロディーに表れてることが嬉しい。
なにより、その源があたしであると言ってくれた高成が愛おしい。
「だから、最初から涼を手放す気なんてないんだよ」
そう笑った声が脳天突き抜けて爪先まで一気に駆け抜ける。
あたしってむっちゃ幸せ者なんやん。
こんなにも愛されてる。
これ以上ないくらい幸せ感じてる。
今、人生で最高に幸せ。
こうして手を繋いで並んで歩くこともなかった。
メンバーとご飯を食べることも、不安になることも、恋人同士になることもなかった。
「“運命”なんかなぁ?」
そう考えたらポロッと口から出た。
だって普通じゃ無理な話やん?
何千人っていてる中のあたしを選んでくれた高成。
しかも超普通で平凡な才もないこのあたし。
「だってあたしやで?このあたし。意味わからんや、」
マイワールドにトリップしてたから、あたしがなんやかんや心の中で喋ってる間、高成が話しかけてきてたんかもしれんけど、全く聞こえてなかった。
だから、繋いでた手がクイッと引っ張っるまで高成の足が止まってることに気付かんかった。
「高成?」
名前を呼んでも無反応。
でも瞳だけはあたしに向けられてて、それはライブの時によく見る瞳で。
“真剣”とか“真っ直ぐ”とかそういう感じじゃない。
“それしか見てない”“それしか見えてない”って感じの強い瞳。
それが今はあたしに向けられてて、思わず動けんくなる。
足が動かんくなって高成を見つめるしかなくなると今度は高成から歩み寄ってくる。
ゆっくりと、でも視線はそらさないままで、この先どういう行動に出るか予測できんままドキドキする。
二人がくっつくまで、あと一歩...の所で立ち止まり、手が伸びてくる。
頬に伸びてきた手にピクリと反応したあたしに微笑んだ。
「“運命”に決まってんじゃん。今更なにいってんの?」
そう言った高成は外で人通りもあるのに、それを構わず触れるだけの軽いキスをした。
突然のキスに唖然とするあたし。
「俺、涼を手放す気なんてさらさら無いよ」
それに手放すくらいならあんなタイトル付けないし、と笑った。
何の話?って思ったけど、すぐにわかった。
「もしかして、あの曲?」
「そう。キョウと涼介に超怒られたし。でもキョウも悟も同じような事してんだぞ?怒られる意味がわかんなかったけどね」
そういうとまた手を繋いで歩き出した。
高成はニコニコしながら話すけど、あたしにはかなり恥ずかしいこと。
だって、まさかそういう意味やって思えへんかった。
初めて見たときは「どういう意味やろう?」って思ったけど、電話で聞いてみたらまさかまさかの返事で一瞬言葉失った。
「女の名前使って何が悪いんだって話じゃん。涼も知ってると思うけど“薺”は歌詞が悟だし、“夏陽”は作詞作曲キョウだし。俺が“R”って曲書いたって悪くないと思わない?」
悪くない。
全然悪くないし、むしろすごい嬉しい。
だって高成からかかってくる電話の着信に設定してるもん。
高成が言ってた3曲は全部ラブソング。
高成なんか赤裸々すぎてライブで聴いてて恥ずかしい。
でも一つだけ大好きなフレーズがある。
“誰が何と言おうと僕達の出逢いは運命なんだ。
僕の傍に君がいることがこんなにも幸せで愛おしい”
初めて歌詞を見たとき、感動とかそんなんじゃなくて、単純に嬉しく思えた。
遠く離れてるのに、こうして想ってくれてることが単純に嬉しかった。
ファンはネット上で彼女の存在がどうのこうのって盛り上がってたけど、真相は謎のままだから女の子は自分宛てのように歌詞に惚れ込んでた。
音楽一筋の高成達がこうして恋の歌を書くと誰か一人の愛おしい人を連想させられるのは当然のこと。
「俺らには音楽しかない。音楽が好きで音楽をやることしか脳がない。でもそれを支えてくれる人達がいないと俺達はこうして自由にはできてない。もちろん、それの源はキョウにはサラ、悟には薺だったりする。もちろん俺には涼が必要だし、あの曲はその感謝の気持ちも込めて涼に捧げた曲なんだ」
なんて言ったらええんやろう。
もう、感動しすぎて言葉にならん。
簡単に言葉にするには軽すぎて口には出せんけど、ただ単純に“嬉しい”と思う。
たった半年、気持ちが通じ合ってからたった半年しか経ってないのに、あたしの存在が高成の中でこんなにも大きいんやって初めて知った。
「たった半年だけど、電話でくれる涼の言葉のひとつひとつは涼が思ってるよりも俺には重要でそれが歌になってることって、すごい多いんだよ」
繋いでる手から伝わる温度。
同じ温度を高成の脳まで伝えるには全然足りないって全身が叫んでて、公衆の面前ってことも忘れて横から抱きしめた。
感動で嬉しくて涙も我慢できそうにない。
高成の作る曲にあたし自身が関わってることが嬉しい。
その気持ちがメロディーに表れてることが嬉しい。
なにより、その源があたしであると言ってくれた高成が愛おしい。
「だから、最初から涼を手放す気なんてないんだよ」
そう笑った声が脳天突き抜けて爪先まで一気に駆け抜ける。
あたしってむっちゃ幸せ者なんやん。
こんなにも愛されてる。
これ以上ないくらい幸せ感じてる。
今、人生で最高に幸せ。