八色(やいろ)の虹 ~君らしく僕らしく~



赤・橙・黄・緑・青・藍・紫。

虹を構成する全ての色が、

富士山の麓《ふもと》に集められた。

赤は全色揃った事を確認し話を始めた。

「これで全員揃ったな。

青さん、みんなの召集《しょうしゅう》お疲れさま。

よく頑張ってくれたね。

そろそろ雨がやみ晴れてくると思う。

そこでだ、今までには無かったでような

でっかい虹の橋を掛けようと思う。

富士山を覆《おお》う程のでっかい虹だ」

「オー!」

全色やる気満々である。

盛り上がるみんなに対し、

赤は両手を広げ落ち着くように促《うなが》した。

「なあ、みんな。

白さんが虹のメンバーに入りたいと言っている。

どうだろう。一度やってもらおうと思うんだが」

すると気性の荒い紫が白に喰《く》って掛かった。

「てめえ! 散々俺たちの切符を切っておいて

仲間に入りてえだと!」

何度も白バイに捕まってきた紫は白の事が嫌いらしい。

「紫君、この白さんの塒《ねぐら》は雲なんだ。

君を捕まえたお巡りさんとは違う白なんだ。

いいじゃないか。仲間に入れてあげようよ」

「チッ! まあ、青さんがそう言うならいいっすけど……」

血気盛んな紫とて、命の恩人には従うしかないようだ。

「紫君、そしてみなさん。ありがとうございます。

もう、縁の下の力持ち役なんてうんざりなんです。

我々白も脚光を浴びたいんです。宜しくお願いします」

白はそう言うと七色に頭を下げた。

「おう、白のおっさんよ。

あんた、なかなかいい奴じゃねえか。

俺が今まで会った白とは違うな。

でっかい虹……掛けようぜ」

紫は白の肩をぽんと叩き笑顔を送った。

「さあ、みんな! 晴れてきたぞ! 準備はいいか!」

赤の号令により全色が戦闘態勢に入る。

 虹は外側から赤・橙・黄・緑・青・藍・紫。

そんな順番に構成されている。

一番内側で六色を持ち上げるのが紫の役割である。

「白のおっさん、

紫《おれ》と藍色さんの間に入んな。

俺がしっかり持ち上げてやっから安心してくれ」

「かたじけない」

そして全員が指笛を鳴らすと八色の絨毯が現れた。

各々が絨毯に飛び乗ると

山梨側から静岡側へと大きな弧を描き

八色の虹が掛けられた。

しかし富士山を覆う程の大きな弧にはなっていない。

「白のおっさん、随分と重いな。まあ、任せとけ!」

紫は渾身《こんしん》の力を込め、

虹全体を持ち上げた。

「ウーリャー! これで……これでどうだー!」

すると虹は大きく膨らんだ。

富士山の遥か上空に虹の橋が掛けられたのだ。

学校帰りの時間帯と重なった事もあり、

北海道から沖縄まで

ランドセルを背負った子供たちは

皆空を見上げている。

「すげえ! なんかいつもと違うぞ!」

「こんなに大きい虹なんて見た事ないわ!」

最初は皆喜んでいた。

しかし数分後、子供たちの顔は雲っていったのだ。

「どうした、子供たち」

赤は子供たちの顔が雲っていった事を不思議に思った。
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