クールな同期と熱愛はじめ
「ふたりともホテルじゃだめですか?」
管理人さんと工事業者さんのうしろから、桜木くんが顔を覗かせた。
そうだ。どっちも選び難いから、その方がまだいい。
「ええ、それでももちろん大丈夫です」
管理人さんが振り返って答える。
「あの……宿泊費用は……?」
私が尋ねると、管理人さんと工事業者さんは、私たち両方の顔が見えるように立ち位置を変えた。
「ご請求ください。全額お支払いいたします」
「そこまでの交通費もですか?」
「はい、もちろんです」
それならよかった。
「では、3階の部屋はどちらもお使いになりませんか?」
「はい。ふたりともホテルに行きます」
桜木くんが答えてくれた。
そうと決まれば、必要なものをバッグに詰めて、早いところホテルへ行きたい。
腕時計を見てみれば、午後九時を回っていた。
桜木くんと十分後にエントランスで待ち合わせ、急いで支度をする。
ひとまず三日分の荷物と貴重品を詰めると、キャリーバッグがいっぱいになってしまった。
エントランスへ行くとすでに桜木くんがいて、私の荷物を見て「そんなにあるのかよ」と目を見張る。彼の手元を見れば、小さなボストンバッグひとつだった。
マンションの前には管理人さんが手配してくれたタクシーが停まっていて、そこに揃って乗り込んだ。