クールな同期と熱愛はじめ
桜木くんは「へぇ」と言って目を細めた。
「だから、ありがとう」
「……唐突だな」
「うん。一応お礼は言っておこうと思って」
遥か先を歩くライバルだけに、ちょっとした嫉妬があるのは事実だけど。
桜木くんはどこか照れくさそうに鼻の下をこすった。
「宇佐美は、どうして住宅の設計を?」
「どうしてって、志望動機のこと?」
尋ねた私に彼がうなずく。
「父親の影響かな。大工だったの」
「そうなのか」
「子供の頃、その現場によく行ったんだ。端材で小さい家を造ってみたりして。母親には、危ないし邪魔になるから行ったらダメってよく叱られたんだけど」
父は私を『女棟梁にするんだ』って言っていたっけ。
「今も大工を?」
桜木くんの質問に首を横に振った。