クールな同期と熱愛はじめ

「そうなんだ」


じっと部屋にこもっているのも確かに暇だろう。なにかやっていたほうが気は紛れる。


「そうだ。これ、やるよ」


そう言って桜木くんがテーブルに置いたのは、A4サイズくらいの写真集のようなものだった。タイトルには“世界の建築様式”とある。
中をめくってみれば、各国の教会や寺院、劇場やホテルなど、ありとあらゆる建物が紹介されていた。
設計が好きな桜木くんらしい一冊だ。


「いらないの?」

「ほぼここに入ってるから」


そう言って、自分の頭を人差し指で差した。


「なんか嫌味に聞こえる」

「卑屈だなぁ」

「ふーんだ」


桜木くんはクククと肩を震わせた。


「宇佐美は、そのまま真っ直ぐ突き進んでいけよ」

「唐突になに?」

「いや、別に」


首を軽く横に振り、桜木くんはビールを喉に流し込んだ。

桜木くんがくれた本をなんとはなしにめくる。住宅とは違うスケールの大きな建物の写真を見ていると、いろんなところに設計のヒントが隠されていそうな気がしてくる。
桜木くんはきっと、ここからもたくさんのものを吸収したんだろう。
私も負けていられない。
そう強く思った。

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