クールな同期と熱愛はじめ
「……あ、そうなんだ」
パッと手を離す。優しい気づかいだとは思いもしなかった。
「また豪快に咳き込まれたら、俺まで具合が悪くなる」
皮肉を込めた桜木くんの言葉に、私はなにも返せなかった。彼の言うとおりだったからだ。
しばらくすると、うちわかなにかであおいできたのか、桜木くんは、湯気が消え失せた茶碗を手に戻った。
「ほらよ。それくらいなら熱くないだろ。ったく手がかかる女だな」
「……すみません」
それを受け取ると、彼はベッドサイドにあぐらをかいて座った。私が食べるのを観察する気らしい。
刺すような視線を浴びせられながら、レンゲを口元まで運ぶ。出汁なのか海鮮系の匂いがしたものだから、空いていたお腹はさらに飢えたようになった。
すぐさまレンゲを口の中に突入させる。詰まっているはずの鼻から抜けていく、貝柱の香り。塩加減もちょうどいい。まるで私の好みを知っているような感じだ。
優しい味だった。