凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない
その日の夜、透の帰宅を待って美鶴はこう切り出した。
「昼間は心配かけてごめんなさい。それと、仕事を始めてもいいですか?」
「仕事? ずいぶんと急だな。お金が必要? 足りないなら言ってくれたら……」
「そうじゃなくて」と美鶴は透の言葉を遮る。
「自立できるようにしておかないとなって思って」
「自立か……それは、離婚後のことを考えてということ?」
「はい」
「なるほどな」
透は寂しそうに微笑むと「美鶴の好きにしていいよ」といった。
「じゃあ、おやすみ」
 美鶴は書斎に消えていく透の背中を見送る。
「好きにしていい、か……」
 それは“どうでもいい”に聞こえる。勝手にしろとも。
なにを期待していたのだろう。透にとって美鶴は妻でありさえすればいい存在でしかないのだ。
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