凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない
配属されたのは循環器病棟で、心臓の疾患を抱えて患者が多く入院しているという。
「町田さん! ちょっと来て」
江口に呼ばれてやってきたのは美鶴と同年代くらいの女性。長身で栗色のショートカットがよく似合っている。
「この子、今日から働く志木さん」
「志木美鶴です。よろしくお願いします」
美鶴は丁寧に頭を下げた。
「私は町田です。キャリアは四年でリーダーをしてるの。しばらくは私が指導者ってことで。あなた、経験者なのよね?」
「はい。診療所で看護助手を四年ほど」
「私と同じだ! 高卒?」
「はい」
「一緒~」
おしゃべりが止まらない様子の町田に、江口はゴホンと咳払いをする。
「町田さん、ちゃんと指導よろしくお願いしますね?」
「はい。任せてください。じゃあ、いこうか。まずは病棟を案内するね」
美鶴は町田について病棟内を回った。診療所とは比べ物にならない広さで、入院している患者の重症度も高そうだ。
「知ってると思うけど、仕事は食事の配膳、ベッドメイク、トイレとお風呂の介助、検査の付き添いとかね。後は、看護師さんの御用聞き。これ一番大事! で、あそこにいるのが師長さん。挨拶しに行こう!」
看護師長に挨拶を済ませ、リハビリへ行く患者の送迎に同行する。院内はさらに広くリハビリや検査室がどこにあるのか覚えるだけでも時間がかかりそうだ。
美鶴はメモを取りながら一生懸命に町田についていく。
「そろそろ休憩に入ろうか。疲れたでしょ?」
「はい。疲れました……」
「ご飯は持ってきてる?」
「いえ、今日は作る余裕がなくて……」
「そうだよね。私も作る余裕なくて、買うか食堂か、なんだけど。今日は食堂行ってみる?」
財布を取りにロッカーへ戻り、町田とともに食堂へ向かった。中に面した広々とした空間で、職員と患者だれでも利用できるようになっているようだ。おなかが空いていていた美鶴はミックスフライが付いた日替わり定食を選んだ。
「町田さんは夜勤もされるんですか?」
「してるよー。その方がお給料もあがるから。志木さんは?」
「私もしたいなと思ってます」
町田の言うように夜勤手当がついたほうが給与は上がる。これからの生活を考えたら所得は多いに越したことはない。
試用期間が終わったら真っ先に夜勤に入りたいと伝えようと美鶴は思った。