クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「チョコ、そろそろフード食べるか?」
「ワン!」
出来上がったものを並べていると、葛城さんはチョコを連れてダイニングから出ていった。
しばらく待ってみたけれど、戻ってくる気配はない。
(やっぱりね……ちょっとでも期待した私がバカだ)
もしかすると一口だけでも食べて貰えるかも……なんて、虚しい期待をなぜしちゃったんだろう。
泣くな、と込み上げるものをご飯と一緒に無理やり飲み込む。
“お母さん、卵まっくろだよ”
“あらあら。普通の玉子焼きのはずなのになぜかしらねえ”
“お母さん、にがいよ~”
“夕ちゃん、無理に食べなくていいのよ”
“だけど、おかあさんががんばって作ったもん。だから食べるの”
“まぁ……夕ちゃんたら。お料理下手なお母さんでごめんね“
“いいもん! 夕がおっきくなったら、おいしいごはんたくさんつくるの! おかあさんのかわりに”
“夕ちゃん……ありがとう”
お母さんとした約束は結局永遠に果たせないけれど……一生懸命お料理を覚えた。いつかまた、あたたかい食卓があることを夢見て。
家族が出来たら、たくさん栄養がありおいしいものを作って。些細なことで笑いあいながら一緒に食べるのが夢だった。
(でも、もう……きっとダメだ)
ぽたぽた、と涙がテーブルに落ちた。
本当に、私の小さくてささやかな夢だった。他の人たちが当たり前に囲まれる光景の一員に、私もなってみたかった。
でも、私には手にできない。
どんなに望んで手を伸ばしても……きっと叶わない。
残したらダメだ、と目元を拭い、口にしたお料理は……砂を噛むような味気無さしかなかった。