クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
カタン、と微かな音が聞こえた。
(え……)
俯いた顔を上げると、葛城さんがいつの間にか向かい側の椅子に座ってた。それだけでも信じられないのに、彼は箸を手に取る。
そして、小鉢にある冬瓜の餡掛けをじっと見た。
「……この食材は?」
「あ、はい。と、冬瓜と鶏肉です」
「トウガン?」
本気で知らなかったのか、葛城さんは眉を寄せて考え込んでいる。そして、「カモの一種か?」と大真面目に言うものだから、思わず吹き出した。
「ち、違いますよ。瓜の一種です。カボチャやスイカと同じ仲間ですよ」
「これが瓜だと?」
大根じゃないのか? と箸で掴んだものを観察し出す。真剣みがあるだけに余計に可笑しくて、笑いを堪えるのが大変だった。
しばし観察後冬瓜を口に入れた葛城さんが目を見開いたから、いよいよ堪えきれなくなって声を上げて笑ってしまいました。
「笑うな」
「わ、笑ってません」
「笑ってるだろ、絶対」
どこかで聞いたようなやり取りの後、葛城さんは箸で小さく切りながらもゆっくりとしたペースで食事をしていく。その間に食材や調理法についていろいろ訊かれる以外に会話はなかったけれど、私からすれば信じられないくらいにしあわせな時間だった。
(葛城さんが私のごはんを食べてくれた……)
しあわせ過ぎて信じられないけれど、これは現実の出来事。
たとえこの一度きりだとしても、好きな人が手料理を食べてくれた。こんな幸運はもうないだろうから、憶えておこうと一生懸命に彼を見つめた。