クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



何気なく視線を向けた先にあったものだったけど、すぐさま目を奪われた。


ガラスのケースに入ってるのは、精巧な恐竜のフィギュア。周りに本物か偽物かわからない緑が配置されていて、古代の風景がよく再現されてる。


POPには「イタリアの職人が一点一点手作りしています」と写真入りで解説されてる。


じっと見てたからか、店員さんが近づいて説明をしてくれた。


「これはエアプランツという土が要らない特殊な植物なんですよ。もともと高原や砂漠の植物で、毎日の水やりが不要で日陰で育ちますから、多忙な方でも気軽にお部屋に緑を置けますわ」

「エアプランツ……」


初めて耳にする単語に興味を覚えた私は、店員さんにいろいろと訊いてみる。店員さんは面倒くさがらず丁寧に答えてくれ、一緒に選ぶお手伝いまでしてもらえた。


最終的に選んだのは、ティラノサウルスのエアプランツ。ラッピングまでして貰う最中に、15センチくらいの小さなクリスマスツリーもそっとレジに置いた。


お母さんが生きてたころ、クリスマスと言えばお母さんの職場の繁忙期だったから、私はいつもギリギリまで保育園に預けられてた。 保育園でもクリスマス会はあったけど、母子家庭で孤立してた私にはあまりいい思い出がない。


ちゃんとしたケーキを買うお金がなかったのか、クリスマスにはお母さんとホットケーキを焼いて食べるのが習慣だった。
それ以外クリスマスらしい過ごし方をしたことがない。ツリーもケーキもチキンもパーティーもプレゼントも。私には無縁のものだった。


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